気の向く侭に撮る 出井健一郎 (ojofresco代表)
- 写真を撮る時、私の心と目とレンズが直列直感になりストレートにシンプルにシャッターを切る。目と脳とレンズの順番だと間脳になって要らぬ意思が入って具合が悪いのでよけいなフィルターは排除する。
- 自分の心に入ってくる美しい物、情景、時間をなるべくそのままに残したい。
- それらの物は時間と共に劣化してゆく、時間は淡々と流れ静止することなく偉大なる王のごとく空間を支配している。唯一時間が止まるのが写真の時間だけである。
- シャッタースピードの調整で時間を伸ばしたり縮めたりする事で物質の本質に迫り肉眼では見る事は出来ないが確実に存在する美しい時間と空間を見る事が出来る。
- 長い月日をかけて記録する事で複雑難解な被写体の輪郭をつかめる可能性もある。
- それぞれの表情は光と陰で徐々に変化し同じ時間は二度と共有する事は出来ない。唯一静止させる事が出来る貴重な一瞬なのである。
- 以前、銀塩写真の印画紙現像の時、お互いを全く知らない印画紙に写った者同士が薄暗い暗室の定着液の中で男も女も子供も老人も揺らぎながら静かに銀が固まるのを待っている。この静止した孤独な鈍い時間が何かエロティックで不思議、とても奇妙な感じがした。
- 写真のデジタル化が進みこういう楽しみは消えたが、しかしデジタル写真が熟成していい味と匂いを出す時が来るだろう。可能性は無限に広がっている。
- 現代は誰でもカメラを持ち歩く時代で押せばそれなりの写真が写る、だからこそ写真家の価値が問われている。感性の時代でもある。